警察の捜査に使われるGPS端末。裁判所の令状がなく捜査対象者の車輌などにGPS端末を取り付ける捜査が違法かが争われた裁判で、最高裁大法廷が15日、初の判断を示す。捜査によるプライバシー侵害や「位置情報」をどう考えるかが争点だ。全国の探偵興信所でも注目している裁判だ。
GPS捜査をめぐる争点と主張
弁護側 | 検察側 |
GPS捜査と位置情報の性質 | |
人間関係や思想、信仰、性的嗜好など幅広い個人情報が分かり、プライバシーを大きく侵害する。捜査機関による乱用の恐れが大きい | 分かるのは、車の位置だけで、道路と不特定多数が出入りできる場所に限られる。尾行や張り込みと比べてもプライバシー侵害は大きくない |
「強制捜査」にあたるか | |
裁判所の令状が必要な「強制捜査」にあたる | 令状が不要な「任意捜査」だ |
強制捜査だとして、今の令状の仕組みでできるか | |
運用ルールを定めた新しい法律がない限り、実施できない | 現在の刑事訴訟法が定める「検証許可状」で実施できる |
企業などが持つ情報
企業などが持つ情報を捜査機関が取得する際には、「捜査関係事項照会書」と呼ばれる書類で問い合わせる。刑事訴訟法に基づく手続きで、捜査機関の判断で出せるが、企業側が拒んでも罰則はない。例えば全国銀行協会は自主ルールで、照会書を受ければ銀行口座の取引内容を捜査機関に開示できる、としている。また、防犯カメラの映像を提供するかは、カメラの設置者の意向次第だが、コンビニチェーン大手は「照会書があれば応じるている」という。一方、通信大手各社は携帯電話の通話履歴やメール、基地局や内臓GPSから得られる位置情報を提供する場合、裁判所の令状を求めているという。
位置情報取得に令状は
GPS捜査がメールや防犯カメラ映像と違うのは、捜査機関が自ら情報を取得する点だ。最高裁判決を控え、昨秋から令状を取得するケースも出ているが、警察庁は長く、尾行などと同じで令状が不要な「任意捜査」と位置づけてきた。捜査対象者を道路上でひそかにビデオ撮影した手法が争われた。最高裁は「公道上などで容貌を観察されるのは受忍せざるを得ず、適法だ」と判断。他の判例でも道路などの公共空間ではプライバシー保護の必要性は高くないとされてきた。
弁護側
GPSという新技術によって「捜査機関に常に位置情報が取得され、人間関係や信仰、思想・信条、性的嗜好まで明らかになってしまう」と指摘。「誰が、いつ、どこにいたかという情報は、プライバシーとして強く保護されるべきだ」と訴える。