SNS投稿の問題点

「ダウンロード違法化」など、インターネットと著作権の問題が取り沙汰されることが増えています。SNSが広まり、大人だけでなく子どもも、簡単に文章やイラストを公開できるようになりました。著作権を侵害しないために、どんなことに気をつけたらよいのでしょうか。
 

子どもがきをつけること

著作権教育に携わる横浜国立大学の山本光(こう)教授と東京情報大学の松下孝太郎教授は昨年、子ども向けの「やさしくわかるデジタル時代の著作権」(技術評論社、全3巻)を著した。
 
 「運動会の応援ポスターにアニメのキャラクターを使ってもいいの?」「ブログやSNSに本の内容をのせてもいいの?」といった日常の場面に引きつけて、著作権の考え方を解説。違法でないもののモラルとしてやめた方がいいこともやさしく伝えている。
 
 著作権について解説した大人向けの本はあるが、難解なものが多く、小中学生に理解できる本が必要だと考えた。彼らも「当事者」だからだ。
 
 写真や動画の撮影、SNSの情報発信が誰でも簡単にできるようになった。子どもも知識やモラルを身につけておかなければならないが、著作権についてきちんと学んだ親や先生は少なく、大人自身、知らずに権利侵害をしていることもある。
 
 松下さんはさらに、子どもが特に気をつけなければいけないこととして「法律が身近でないため、法に触れたり、訴えられたりすることが予想できない」ことを挙げる。(朝日新聞記事)
 

 リツイートめぐり訴訟も

 
 気軽にしたSNSの投稿でも、場合によっては高額の損害賠償を請求されたり、事件になったりする恐れがある。
 
 写真が無断でツイッターで使われ、リツイート(転載)によって権利が侵害されたとして、写真の撮影者が発信者の情報開示を求めてツイッター社を訴えた事例がある。知的財産高等裁判所は、著作者人格権(著作物を勝手に公開されたり中身を変えたりされない権利)の侵害を認めた。
 
 国民生活センターにも相談が寄せられている。
 
 関東地方の20代の男性は一昨年、キャラクターのイラストが映った動画を投稿したところ、キャラクターの著作権を持つ会社から「権利侵害の疑いがあり、連絡を」という内容のメールを受け取った。放置していると、今度は「連絡がなければ法的措置を取る」と伝えられたという。
 
 他の人の著作物を使う時は著作権者の許可を得るのが基本だ。例外は、著作権の保護期間が過ぎていたり、引用の条件を満たしたりしている場合に限られる。SNS上には許可を得ていないと思われる投稿が多く見られるが、著作権者が放置しているだけで、許されているわけではない。
 
 山本さんは「『みんながやっているし、タダだからOK』という自然発生的な心理ではなく、『作者の思いを大切にする』というモラルは、子どものうちに学習によって身につける必要がある」と指摘する。
 
 著作物は「人が心をこめて考えてつくったもの」。著作権は「自分が一生懸命つくった作品を、だれかが許可なく利用することから守ってくれる権利」。本の前書きで、そう説明した。
 
 山本さんは「著作権の基本的な心構えは、他の人の著作物に感じている価値に敬意を払う必要があるということ」と助言する。「『好きなキャラクターだから、みんなに広めよう』など、よかれと思ってした行動でも、当事者が嫌だったら意味がないということを間違えてはいけません」(栗田優美)

著作権侵害に注意

 情報を発信する際には、著作権の侵害に注意しなければなりません。写真、イラスト、音楽など、インターネットのホームページや電子掲示板などに掲載されているほとんどのものは誰かが著作権を有しています。これらを、権利者の許諾を得ないで複製することや、インターネット上に掲載して誰でもアクセスできる状態にすることなどは、著作権侵害にあたります。また、新聞や雑誌などの記事にも著作権があり、引用の範囲を越えて掲載すると著作権侵害にあたるため、注意しましょう。
また、人物の写真などの場合は、撮った人などが著作権を有するだけではなく、写っている人に肖像権があるため、ホームページに掲載する場合にはこれらすべての権利者の許諾が必要になる場合があります。
情報を発信する際に、市販の素材集(絵や写真など)やインターネットに素材を提供しているホームページなどでは、これらを利用する場合に権利者による許諾の必要がない旨を記載されていることがあります。しかし、そのような素材であっても、商業利用については制限がかけられていることがあるため、必ず規約をよく読んでから利用するようにしましょう。

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