金融庁職員や警察官をかたって住宅を訪れ、キャッシュカードを偽物とすり替えて盗み出す「職権盗」事件が、埼玉県内で急増している。振り込め詐欺などの特殊詐欺の一種とみて、埼玉県警が注意を呼びかけている。
埼玉県羽生署によると
昨年12月25日午後、羽生市の無職男性(66)方に、警察官をかたる男などから「犯罪の被害に遭った可能性がある」「キャッシュカードを封印する必要がある」と電話があった。その後、男性方を訪れた金融庁職員をかたる男がキャッシュカードを4枚をいったん受け取り、男性に誰かがあけたらわかるよう、封筒に入れたうえで割り印を押して保管するよう求めた。その際、男は偽物のカード4枚が入った別の封筒にすり替え、本物のカードを盗んだという。その日のうちにカードが使われ、200万円が引き出されたという。
埼玉県警捜査2課
同様の職権盗被害を昨年1~11月で40件把握している。前年同期の2倍近くにのぼり、10月に9件、11月には10件起き、12月はさらに被害件数が増えるなど、増加傾向が続いているという。刑法上は窃盗罪に当たるが、同課は、銀行員などをかたってキャッシュカードを新しくするよう呼びかけ、「古いカードは預かる」などと言って手渡しさせる特殊詐欺の手口から派生したものとみる。この手口の特殊詐欺も昨年、前年の3倍以上に増え、11月までに316件発生した。
同課担当者
職権盗の場合、「本物のカードを預かる手口に比べ、被害は本物のカードが手元の封筒に入っていると思い込んでいるので、実は偽物だと気付くまでにかなりの時間がかかる」と分析する。その間、犯行グループは盗んだカードで現金を引き出せる。同課はキャッシュカードの現金引き出し限度額を下げておくなど、事前の対策を呼びかけている。