捜査対象者の車輌にGPS(全地球測位システム)端末を取り付ける捜査手法をめぐり、警視庁が都道府県に出したマニュアルで、GPS捜査の存在を捜査書類に書かないよう指示していたことが分かった。数多くの探偵興信所では、GPSを使用した浮気調査や不倫調査を実施していることから、警察の捜査にGPSを利用するにあたり論争は実に興味深いものである。
目次
警視庁がだしたマニュアルとは
マニュアルは2006年6月に出された「移動追跡装置要領」。警視庁はGPS捜査を裁判所の令状なしでも実施できる任意捜査と位置づけ、具体的な運用方法を記していた。
【明らかになった「保秘の徹底」3つの項目】 |
① 捜査書類には、移動追跡装置の存在を推知させるような記載はしない |
② 被疑者の取り調べでは、移動追跡装置を用いたことを明らかにしない |
➂ 事件広報の際には、移動追跡装置を使って捜査したことを公しない |
GPS捜査全国初の令状
捜査対象者の車輌にGPS(全地球測位システム)端末を取り付ける「GPS捜査」を、千葉県警が全国で初めて裁判所の令状を取って実施したことが22日、捜査関係者の取材で判明した。警視庁は令状がいらない任意捜査が可能と位置づけてきたが、各地の裁判でプライバシィーを侵害しないかが争われている。「情勢を勘案し、念のために令状を取った」と説明している。
組織的な自動車盗難事件、令状の条件
● 私有地に無断で立ち入ってつけないこと
● 捜査に支障がなくなった時点で本人に知らせること
日弁連「GPS捜査中止を」
裁判所の令状を取らずにGPS(全地球測位システム)端末を使う警察の捜査手法について、日本弁護士連合会は「直ちに中止すべきだ」と意見書をまとめ、1日に警視庁に提出した。
弁護士会の意見書
「張り込みや尾行と違い、GPS捜査では私的空間における位置情報も取得できる。プライバシー侵害の程度が大きい」と指摘。収集された記録が目的外利用されるおそれがあり、捜査対象者に不服を申し立てる機会もない、などと非難した。ただ、「極めて例外的にGPS捜査が必要になる場合がある」とも述べ、令状発布の要件や手続きを法律で選定する必要性を指摘。実施期間の特定や、捜査終了後の告知義務などを要件の例として提案した。