バスやトラックを盗んだとして2人が窃盗罪で起訴された事件の捜査で、警視庁が裁判所の令状をとらずにGPS端末を車に取り付け、動きを確認していたことが関係者への取材で判明した。
GPSは違法か、違法でないか?
令状なしのGPS捜査をめぐっては、プライバシーを侵害しないかが各地の裁判所で争われ、「違法」「違法でない」などと判断が分かれている。
判決・判決月 | 裁判所 | 違法性 | 判断 |
2015年12月 | 名古屋地裁 | 違法 | 任意の捜査として許される尾行と質的に異なり、プライバシーを大きく侵害する。 |
16年1月 | 水戸地裁 | 違法 | 尾行の補助手段として想定される以上にプライバシーを大きく侵害する危険性がある。 |
2月 | 広島地裁福山支部 | 適法 | プライバシーを侵害するとは言えず、令状が必要な強制捜査ではない。 |
6月 | 名古屋高裁 | 違法 | 交友関係、思想、信条などの個人情報を網羅的に明らかにすることが可能で、プライバシーを大きく侵害する危険性がある。 |
7月 | 広島高裁 | 適法 | (GPSを装着する)車は公衆の目にさらされ、プライバシーとして保護する必要は高くない。 |
※ 判断が分かれている為、今後は最高裁大法廷が審理し、統一見解を示す見通しだ。
弁護側
被告の2人が事件現場まで行ったことや被害車輌に乗ったことなどを示す捜査報告書について、証拠からの排除を求めている。「プライバシーを侵害するような手法で収集された証拠に証拠能力はない」と渡辺佑太弁護士は話す。
警視庁
警視庁は、GPS捜査を裁判所の令状が要らない任意捜査と位置づけている。2006年には運用要領を各都道府県警に通達。対象は窃盗など7種の犯罪で速やかな検挙が求められ、他の捜査では追跡が難しい場合に限っている。
